2018年10月27日 他人事ではない!隣家トラブル「家の解体・建築工事編」


 
日 時:平成30年10月27日

テーマ:他人事ではない!隣家トラブル「家の解体・建築工事編」

講 師:弁護士 上田 敦 氏

参加者:50名

当日の講義からすぐに役立つポイント\PICK UP‼/
京安心すまいセンターへのご相談件数が多い、隣家の解体工事や連棟の切り離しに関するトラブル。
相談例別の予防と対処法について、住宅問題の解決に実績のある弁護士がポイントをしぼって分かりやすく説明します。
 

長屋の問題・権利関係

相談事例

  • 3戸長屋の2戸を解体する予定。残る 1 戸の権利者から合意を得る必要があるか。

本来、土地と建物は別々の財産なので、所有権などの権利も土地と建物のそれぞれに与えられます。
土地と建物の所有者が違ったり、どちらかまたは両方が複数の人に共同所有されている場合もあります。
長屋の場合、さらにいろいろなパターンがあり、その権利関係によって、解体や切り離しのときの問題に適用される法律が違います。

たとえば、長屋全体を分譲マンションのような共同住宅としている場合には、区分所有法が適用されます。切り離して撤去する場合は区分所有者の4分の3以上の賛成が、切り離して建て替える場合は 5 分の 4 以上の賛成が必要となります。

区分所有ではなく、住戸ごとに登記されている場合は、民法が適用され、切り離す場合は、隣接している住戸の所有者の同意が必要です。
また、長屋全体がひとつの建物として登記されている場合は、全戸の同意が必要です。

いずれにせよ、長屋の一部であっても解体や切り離しをするときに、所有者の独断で行うことはできません。
所有権がどうなっているかは、法務局で土地と建物の登記簿を確認すればわかります。

長屋の問題・安全性

相談事例

  • 2戸長屋で隣家が解体される予定。影響がないか心配。

長屋は構造上ひとつの建物なので、その一部を切り離すことで、構造耐力上必要な柱や梁が失われてしまうことがあり、建物全体の構造耐力に悪影響を与えます。

また、屋根や壁の一部を除去することになると、雨水が侵入する可能性が高くなります。長屋の切り離しや部分的な立て替えは、慎重にすすめなければなりません。必ず権利関係を確認し、関係する住戸からの同意を得ておかないと、不法行為による損害賠償責任が生じます。

また、工事の方法については、必ず建築に関する専門的知識も必要です。
何らかの問題が発生した場合は、感情的にならず、すぐに弁護士や建築士などに相談して、問題解決につながる知識を得るようにしましょう。

越境の問題

相談事例

  • 大屋根が互いに越境状態。建て替えを予定している隣家から,越境部分を撤去するよういわれた。

まず、境界線を正確に把握することが必要ですが、京都市内でも、境界線が不明なところがたくさんあります。
そのときは、土地家屋調査士など境界の専門家に相談して、正確な境界を定めましょう。

境界が確定していて、実際に越境状態にある場合は、原則として越境している方がその状態を解消する義務があります。
ただ、金銭での解決や、越境部分の土地を時効取得が可能な場合もあります。

相談事例

  • 隣家が解体される際,屋根の越境部分を撤去するよういわれた。翌日,越境部分が撤去されていた。
  • 隣家の解体工事の際,勘違いしてこちら側の境界壁を壊された。

他人のものとわかっていて撤去した場合は、器物損壊罪にあたります。すぐに弁護士に相談しましょう。
故意ではなく不注意や過失で損壊した場合、犯罪にはなりませんが、不法行為に基づく損害賠償責任が問われます。

このようなことが起こった場合、感情的にならず、現場の写真を撮り(近いところ、遠いところ両方から撮る)、工事の中止を申し入れ、法律の専門家に相談しましょう。

日照の問題

相談事例

  • 隣地に 3 階建てが建つ。自宅が日陰になると申し入れたが,高さが10m以下なので問題ないといわれた。

建築基準法では、採光や通風に支障をきたさないように、建築物の高さを規制しています。
日照について、住居系の用途地域(一種、二種低層住宅専用地域と一種、二種中高層住宅専用地域)では、「北側斜線制限」によって、建築する土地の北側の土地の日照を確保するよう規定されています。

また、地域によっては中高層建物を建築する場合、条例で定める「日影規制」があります。
敷地境界線から一定の時間と距離を超える範囲に日影を生じさせないように、建物の形態が規制されます。
北側斜線規制や日影規制が設けられている地域で、被害者の受ける不利益が、社会生活上受忍するべき限度を超えた場合は、違法であると判断され、損害賠償や建築差し止めが認められる場合があります。

※受忍限度の判断基準
・被害の程度
・地域性による日照保護の必要性
・加害建物の被害回避のための配慮の有無
・被害建物の日照被害回避のための配慮の有無
・被害建物の用途(住居か否か)
・加害建物の性質(公共物か否か)
・加害建物の法令適合性(日影規制違反の有無など)
・交渉時の誠実な対応の有無

境界からの距離問題

相談事例

  • 隣地が建売住宅になり、境界から 30cm 程度しかあけずに基礎の工事が始まった。
    もう少し離せないかと業者にいっても、地域の慣習に従っているので,これでよいといわれる。

民法には「境界から 50 センチ以上離す」ことが定められており、50 センチに満たない場合は工事開始から 1 年以内で、工事中であれば中止や変更を、工事が終わっていれば、損害賠償を求めることができます。

しかし、建築基準法では防火地域や準防火地域では外壁が耐火構造であれば、隣地境界線に接して建物を建てることができるとされているほか、民法でも「異なる慣習があれば、慣習を優先」という定めがあります。

東京の繁華街や長崎市では、相互に境界線に接して建物を建てることが慣習として裁判で認められた例もあり、京都市内でも地域によっては慣習が優先される可能性があります。

 

すまいスクールとは

すまい方や暮らし方に関する知識を広め,良好な居住環境づくりを目指す「京都市安心すまいづくり事業」の一環として,京都市が主催し,京安心すまいセンターが運営する講座です。専門家を講師に招いたセミナーや体験型ワークショップ形式の講座で,京都らしいすまいのあり方やすまいづくりの基礎知識などを,市民の皆さまに学んでいただくことを目的としています。

 

対象イベントすまいスクール 他人事ではない!隣家トラブル「家の解体・建築工事編」
DLファイル1
登録者京安心すまいセンター
最終更新日2022-08-12 17:47:08
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