2017年9月30日 トラブル事例から学ぶすまいの知識(1) ~境界・近隣関係~

日 時:平成29年9月30日

テーマ:トラブル事例から学ぶすまいの知識(1) ~境界・近隣関係編~

講 師:京都弁護士会 弁護士 田中 茂 氏

参加者:51名

当日の講義からすぐに役立つポイント\PICK UP‼/
京安心すまいセンターの平成28年度「すまいの相談」では、境界・日照・工事の騒音など、近隣関係についての相談件数が第2位でした。
かつては、ご近所同士のつきあいがあり、「お互い様」という気持ちが共有されていましたが、時間の流れとともに、住民が入れ替わり、人間関係が希薄になることによって、お互いに対する不信感や無理解が生じてしまいました。とくに都市部の人口密集地域では、お互いの生活範囲が接近しているため、小さな不満でも気になりはじめるとどんどん不満が大きくなる傾向にあるようです。

境界についてのトラブル

古くからの住宅地で、近隣の土地の所有者が変わると、過去には「だいたいこのあたり…」、という認識でも支障がなかった境界線についての認識に違いができ、トラブルに発展することがあります。

たとえば、隣同士の敷地の間のブロック塀。
過去にはお互いに境界線上の共有物だと思っていたのに、どちらか一方の土地の所有者が変わると、境界線の認識にずれが生じることがあります。その状況で、塀を撤去したり、建て直すことになると、それぞれの認識が違うので「ウチのものだから勝手にやる」「共有物なのに勝手にやらないで」、あるいは「そちらのものだからそちらの費用で直して」「共有物なんだからそちらも費用を負担して」とお互いが主張することによって、トラブルが発生してしまうのです。

境界とは

境界には一般的に「筆界」「所有権界」の 2 種類あります。

この2種類の境界が一致していれば、トラブルは起こらないのですが、長年にわたって土地を利用していると、土地の一部だけ所有者が変わったり、交換したりしたのに登記に反映されていない、などの理由で、「筆界」と「所有権界」が一致しなくなってしまいます。
その場合は分筆や所有権変更登記などの手続きが必要です。

 

① 公法上の「境界」=「筆界」(不動産登記法第123条)

筆界は2つの土地の境目を示す区切りの線で、土地が最初に登記されたときに定められたものです。
法で定められたものなので、所有者同士の合意があっても勝手に変更することはできません。

② 私法上の「境界」=「所有権界」

個人が所有するそれぞれの土地の範囲を区切る境目であり、所有者同士の話し合いで決められるので、合意があれば変更することができます。

境界トラブルの解決方法

境界が明確でないためにトラブルが起こった場合の解決法としては、法務局が行う筆界特定制度や土地家屋調査士が行う ADR(裁判外紛争解決手続)など訴訟によらない方法と、筆界確定訴訟、所有権確認訴訟など訴訟による方法があり、それぞれにメリット、デメリットがあります。

いずれも登記記録など公的書類から、住民の証言、航空写真など多種多様な資料とそれを読むための知識が必要なので、個人間の話し合いで解決できなかった場合は、土地家屋調査士や弁護士など、専門家に解決を依頼するとよいでしょう。

 

 

騒音や悪臭、振動に関するトラブル

騒音や悪臭、振動などの問題は、工場やゴミ処理場、物流センターなど事業所に対しては公的な規制が行われますが、個人に対しては規制がないため、いったんトラブルになると解決が難しいことがあります。
公的な規制を超えるようなものなら被害の程度がわかりますが、騒音や悪臭、振動は個人によって感じ方に違いがあり、同じような環境に住んでいても、非常に気になる人、あまり気にならない人の差があるからです。

一般的に、ごく普通の状態で普通の人なら気にならないであろうとする範囲を「受忍限度」といいます。

個人間の騒音や悪臭、振動に関するトラブルの解決には、この受忍限度のほか、地域性、生活状況など様々な要素を併せて検討しなければなりません。
また、問題はこれからも生活していくための基盤であるご近所や地域に関わることなので、将来にわたってお互いに快適に過ごせるような解決策を考えることも必要です。

 

対象イベントすまいスクール トラブル事例から学ぶすまいの知識① ~境界・近隣関係編
登録者京安心すまいセンター
最終更新日2022-08-12 14:29:45
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