2017年1月22日 昔の防災、今の防災

■地域防災を考える ~東九条・長谷川家の場合
講師:中川聰七郎
長谷川家は江戸時代から南区東九条にある農家住宅です。
この地が経験した災害は、大半が水害と火災でした。鴨川の流水量の変動や地形の高低差、整備の遅延により、数年ごとに浸水や洪水がありました。また、木造住宅は火災が起こると周囲を延焼させてしまいます。そのため、ムシコ窓などの防火設備や、愛宕山の防火祈祷の札を備える家が多くありました。当時の地域のまとめ役であった長谷川家では、消火器「竜吐水」(りゅうどすい)を設置して火災に備えています。当主の覚書『甲子兵燹図』には1864年蛤御門の変の火災で竜吐水が用いられた様子が描かれており、当時の消火活動でも活躍したようです。
地域の実力者達は、自然災害が起こる度に貴族や寺院に年貢の減免や復旧工事費用調達の陳情に行く等、住民の暮らしを守ることに努め、地域の結束は大変固かったと思われます。
現代では河川整備や火災対策が進み、自然災害の脅威はほぼ解消されています。しかし高齢・過疎化が進む中、地域ぐるみで「防災・減災」に対する備えを行っておくことは重要であり、住民間の①情報の共有、②結束・共助のネットワークの形成・維持への取り組みを継続していくべきでしょう。
長谷川家としては、今後も地域防災の拠点として、普及啓発に取り組んでいきたいと考えています。

■今の防災 ~地域防災を考える
講師:渡辺美紀
現在の京都市の地域防災は、災害対策基本法に基づいた「自分たちのまちは自分たちで守る」という精神のもとで住民によって組織された、「自主防災組織」を基本単位としています。
自分達や家族の身を守ることを自助と呼び、次の段階として地域の住民とともに安否確認や救護活動にあたることを共助と呼びます。行政機関の救助を公助と呼びますが、タイミングとしては最後の段階です。いかに自助から共助へスムーズに連携するかを事前に考えておくことが、地域防災の要です。
自主防災会の防災計画を作成するには、各区の予測被害状況をまとめた防災マップを片手に実際にまちを歩き、地域の現状と災害時の被害想定について検討します。それをもとに、各災害時の行動マニュアルを作成し、資料や緊急連絡網を添付します。加えて、会長等役員の防災時行動シートも作成し、即共助のために動けるように準備しておきます。

京都市には地形上、火山と津波の災害はなく、火災・地震・水災害・土砂災害等が起こり得ます。
・火災:統計上、ほぼ人為的起因です。火災を出さないという基本的な注意、また確実に初期消火を行うことが重要です。
・地震:防災マップを確認し、揺れが起こった場合、まず心がけてほしいのは自分を守ることです。揺れが収まったら火元や電気のブレーカー、ガスの元栓等を始末し、家族や周囲の状況を把握します。避難所では必要なものはすぐには揃いません。例えば飲・食料等は、避難準備袋に可能な限り自身で用意をしておくことが大切です。
・水災害:多くの場合、発生から避難まで時間の余裕があります。また建物内の垂直方向に避難するか、周辺地域等水平方向に避難するかも状況や避難開始場所によります。
避難開始のタイミングや、避難時に特に重要なのは情報収集です。京都市・府、気象庁や国土交通省、各メディア等、情報提供先は多岐にわたっています。その時々に相応しい情報を入手し、自身の生命を守れるよう役立ててください。

■竜吐水(りゅうどすい)について
講師:光田彰
一説によればオランダからの渡来品で、箱に溜めた水を手押しのポンプで放出させる消火器です。長谷川家の竜吐水は1835年に納品されました。この竜吐水の再生を行い、昔の知恵や技術を未来に継承しようというNPO法人古材文化の会との協働により、今回のメンテナンスを行うこととなりました。まず解体し、防水処理や油を塗り、組立と同時に図面も作成しましたが、昔の職人の技術力の高さには大変驚かされました。

【竜吐水の放水体験】
講師:石田昌司
参加者は、シーソーのように左右の竿を交互に上下させることによって、高さと勢いのある放水を体験しました。

対象イベントすまいスクール 昔の防災、今の防災
イベント終了報告日2017-03-30
イベントレポート※本文欄に記載
登録者京安心すまいセンター
最終更新日2016-09-15 10:48:54
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