2020年12月12日 すまいスクール「DIYでメンテナンス~すまいを守り住み継ごう~」 

日 時:令和2年12月12日(土)
テーマ:DIYでメンテナンス~すまいを守り住み継ごう~
講 師:NPO法人日本ホームインスペクターズ協会 近畿エリア部会 坂本 雅之氏、中村 友彦氏、髙橋 昭雄氏
会場:アーバネックス御池ビル東館
参加者:21人

 

Ⅰ 日頃のメンテナンスの重要性(坂本氏より)

1 日本ホームインスペクターズ協会とは、「人と住まいのより幸せな関係を追求し、その思想を世の中に広めること」を目的に活動している。生活者がホームインスペクションを利用し、より安全に、安心して納得できる住宅売買に臨めるように、ホームインスペクションの技術基準・ホームインスペクターの行動基準等を定めている。

2 家の形態は持ち家、賃貸など様々であるが、ここでは、住宅のメンテナンスをせずに放っておくとどうなるのかについて、代表的な例を紹介する。
瓦屋根の場合は、棟瓦の崩落や瓦の凍て割れなどが起こり、板状の化粧スレート材を使った屋根では固定している部分が壊れ、外れてしまうことがある。その結果、軒下まで漏水してしまうことがある。
屋根の上は、なかなか確認することが難しいが、こういった状況は珍しい事ではないので、十分に気をつけておくことが大切。
雨どいを掃除せずに放っておくと、結合部から屋根や天井に雨水がまわり、傷めてしまうことがある。その結果、室内に雨水が浸入すると、壁紙がボロボロになり、水染み跡や結露・カビの要因となることがある。

  

 

また、住宅はしっかり建っているように見えても、常時震動にさらされている。そのダメージの蓄積や乾燥収縮を繰り返すことで、外壁にひび割れが起こる。放置していると、外壁の崩落や雨水の侵入の原因になる。
メンテナンスをしっかり行っていても、構造上の問題や立地の問題で損傷を引き起こすこともあるので注意が必要。

3 「簡易インスペクションチェックシート」を使い、普段の掃除のついでに家全体の健康状態を確認し、手に負えないような箇所があれば専門家に相談することが大切。
例えば、建具のスムーズな開閉ができない時は、建具そのものが歪んでいる場合と、住宅の骨組みが歪んでいる場合とが考えられる。そういった症状を手掛かりに、住宅の健康状態を知ることが重要。
また、年に一度の大掃除などの時期に点検口などを開けて中を確認し、不具合の早期発見、住宅の現状の確認をしておくことで家を長持ちさせることに繋がる。

 

4 住まい手にとっての家の寿命は4つあり、生活をするための「生活道具としての寿命」、自分で手入れすることにより愛着がわく「心理的な寿命」、劣化をとどまらせて建材を長持ちさせる「物理的な寿命」、所有する財産として長く保全する「資産としての寿命」。住宅の長寿命化の基本は住宅のメンテナンスをすること。

5 こまめな点検による不具合の早期発見、メンテナンスが大切な住まいの寿命をのばす。

 

Ⅱ 自分でできる簡単メンテナンスについて(中村氏より)

1 軽微な不具合を見つけて自分で直すこと、自分で直せないものは早めに判断し、専門家に直してもらうことが大切。
アルミサッシは、「サッシが重い」「音がする」「クレセントのかかりが悪い」などの症状が出ている場合、プラスドライバーである程度の調整ができる。
木製開き戸は大きく分けて「造作建具」と「メーカー既製品」の2つに分けられる。造作建具は、歪みを直すには掘り込みなどの作業が伴うため、専門家に任せたほうがいい。メーカー既製品の歪みはプラスドライバーで調整が可能である。
木製の引き戸も同様に、「造作建具」と「メーカー既製品」に分けられ、メーカー既製品はプラスドライバーでコマの上げ下げの調整が可能である。造作建具は、掘り込みした場所にコマを埋めており、コマの上げ下げを自分たちで行うのは少々骨が折れるため、専門家に任せたほうがいい。
また、洗面所の引き戸は、コマ部分にホコリや髪の毛が付着していることが多いので、年末の大掃除の時に確認しておくことを勧める。

2 水回りのコーキングは、年数が経つとヒビが入ったり、破断したりする。コーキングは、中に水を入れたくない場所に打っているため、不具合を見つけた場合はできるだけ早急に補修しておくべきである。

 

コーキングの打替えは、古いコーキング材をカッターで撤去した後の、清掃とマスキングテープの貼り方が大切になってくる。
コーキングの打替え手順↓

また、コーキングの打替えで大事になってくるのは、材料選定である。水回りに最適なのは、「シリコン系コーキング剤」であるが、塗装できないため外壁などのひび割れには向いていない。外壁や躯体などによく使われるのが「変成シリコン系コーキング剤」になる。クロス下地などの内装に使うことが多いのが「アクリル系コーキング剤」で、水にふれる部分には使用できない材料になっている。
水回りでコーキング剤を使用する場合は、防カビ剤入りと記載されているものを使用すると、カビが生えにくい。それぞれの場所や用途に合わせて、コーキング剤を選定することが大切。
屋外でコーキング剤を使用する場合、密着させるためにプライマーを用いるということも覚えておくことよい。

3 室内で多いクロスの剥がれは、内装用のコーキング剤が売られているので、それを使用しローラーで均す。クロスがカチカチになっている場合は、霧吹きなどで水分を含ませてから補修するとよい。

4 その他に定期的にチェックしておくべき場所として、雨の日に樋に不自然なあふれがないか、家の周りの排水桝を定期的に開けてチェックすることを勧める。

5 専門家まかせにはせずに、定期的にチェックすることで不具合を早期発見し、自分で修繕できるものなのか、そうでないのかを早い段階で判断すること。また、必要にかられて業者を探すのではなく、普段から相談できる工務店や設計事務所等を探しておくことが大切。

Ⅲ 専門家に相談して万が一に備えよう(髙橋氏)

1 地震などの災害で住宅が被害を受けた場合、大切なのは、まず保険会社に連絡すること。工務店などに見てもらい見積りの提出があってからでは、本当に地震などの災害で被害を受けたのかどうか判断が難しくなるため、できるだけ早く保険会社に連絡をすることが大切。
被災時に住宅に損害があったとすぐに気づく場合は、家が倒壊してしまう、家の一部が壊れる、屋根の損傷が大きく室内が水浸しになるほどの雨漏れが発生するなどの場合が挙げられる。
雨漏れは屋根の仕上げ方法により異なるため、自宅がどういった構造の屋根なのかを知っておくことが大事。

2 外壁に飛来物が当たって損傷した場合や、建物が揺れたため亀裂が入るなどした場合も、外壁の仕上げの方法により損傷が変わるため、こちらも自宅の外壁の構造がどういったものかを知っておくことで、注意するところがわかる。

 

3 基礎部分の亀裂は木造や軽量鉄骨の場合、換気口周辺や立上り部分として地上に出ている部分にひび割れが入ることが多く、乾燥収縮でもひび割れることがある。重量鉄骨造及びコンクリート造の場合は、基礎がほとんど地下にあるため目視することができない。

4 災害時、住宅の被害に気づく場合は、「近所の人に指摘される」「リフォームをしようとした」「近所が台風の被害の修理工事に入った時に、その業者に指摘された」「訪問営業でみてもらった」などが挙げられる。

5 被害があった場合、どのように修理を依頼するかは「建物を建てた工務店に依頼する」「知り合い、知人に紹介してもらった工務店に依頼する」「近所に工事に来た工務店に見てもらう」「インターネットや広告で依頼する」「訪問営業に来た業者に依頼する」などの方法がある。
しかし、災害時等の非常事態などの場合は、付き合いのある工務店などに依頼しても「忙しくて見に来てもらえない」「応急修理はしてくれるが、本修理をしてもらえない」ことがある。そういった場合は、状況を見て他の工務店にあったてみるなどが必要になってくる。また、付き合いのない工務店では依頼すると「保険に入っていないと伝えると断られた」「工事費が高すぎる」などの不信感を感じるといったこともある。

6 住宅の保険は、損害保険会社各社その他、県民共済やJA共済、全労災などがあるが、保険はあくまでお手伝いである。自分の家を維持管理して守るのは自分の責任である。そのためには、日頃から自宅の状況に関心を持ち、自分でメンテナンスを行うとともに、相談できるかかりつけの工務店や設計事務所との関係づくりが大切になってくる。

 

参加者の声(アンケートより抜粋)

・ 自宅メンテナンスについての重要点知識が得られた。自分で出来るor業者に頼むの判断等
・ 写真による参考事例で判り易かったし,説明も適切でした
・ 自分で出来るメンテナンスを知れて勉強になった
・ すまいのメンテナンスについて,具体的に詳しく教えて頂き今後の維持管理に役立てられそうで,有り難かったです。
・ メンテナンスする気が起こった
・ メンテンナンスの体験ができたらよかった
・ コロナ禍での開催ということで,短時間であったのが残念でした

 

 

 

 

対象イベント【会場参加受付終了】DIYでメンテナンス ~すまいを守り住み継ごう~
登録者京安心すまいセンター
最終更新日2021-10-09 17:25:37
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