【連載】京都 Real Voice~伏見区竹田田中宮町

第4回 伏見区竹田田中宮町 

 

京都real voiceでは、京都市内各地に暮らしている方々へのインタビューを通じて、そこに暮らしているからこそ語れる地域それぞれの魅力を深掘ります。第4回は、伏見区竹田田中宮町にある田中宮市営住宅における3L APARTMENT事業により、田中宮市営住宅で暮らしながら団地自治会の活動をしている龍谷大学の学生、細井辰也さん(政策学部4回生・入居3年目)、伊藤悠希さん(政策学研究科1回生・入居3年目)、田村勝哉さん(政策学部2回生・入居1年目)にインタビューをしました。「LOCAL・LEARNING・LIFE」の3つのLをコンセプトに、一人の住民として団地で暮らしているこの3人の話を聞いてみましょう。

地域とつながり学びくらすあったかい下宿 3L APARTMENT

 

Q 3L APARTMENTについて紹介してください。

(伊藤)3L APARTMENTは、田中宮市営住宅を拠点に大学生が住みながら地域活動に参加して学ぶプロジェクトです。家賃は、2万4800円で、部屋にはすべて家具が付いています。2回生、3回生から入ってくる学生が多く、実家から学校まで通いづらい学生で地域のことに関心がある子が多いです。ここでは、学生たちは自治会にも加入し、色んな地域の行事に参加しています。5月に藤森神社で行われる駈馬神事や、10月に行われるふれあいまつりの手伝いなど、地域の活動に継続して参加し、地域の人とコミュニケーションをとり、触れ合っています。もちろん大学の授業でも地域活動について勉強しますが、座学だけでは分からないことを実際に目で見て体験して感じています。

 

Q 3Lに入居するまでの経緯と理由は。

(細井)私の実家は、奈良です。田中宮市営住宅には2回生から住んでいます。1回生の時は、実家の奈良から1時間かけて大学に来て、大学付近で実施されているボランティアや地域活動に参加していました。メインの活動として、空き室が多かった伏見区桃山の市営桃陵団地の地域活性化に関わっていましたが、通える頻度など、活動に限界がありました。田中宮市営住宅だと、住みながら学び、色んな地域活動が出来るので、それに魅力を感じて入居を決めました。一人暮らしがしたかったのも一つの理由ですが、田中宮市営住宅は、住みながら学ぶことができ、何より、色んな大人に出会って繋がり、住むだけで地域の中に溶け込んで地域活動ができることに魅力を感じて入居を決めました。

(伊藤)私の実家は、大阪です。田中宮市営住宅には、3回生の時に入居しました。私は、政策学部出身で、政策学部では地域課題をどうやって解決していくのかを座学で勉強します。しかし、ゼミ活動では経営と心理というまったく違う分野を専攻し、実際に地域に参加することがあまりなかったため、座学で学んでもよく分からないことがあり、地域をリアルに見てみたいと思っていました。その際に、当時ここに住んでいた先輩の家に遊びにきてこのプロジェクトを知り、それが入居のきっかけになりました。私も一人暮らしをしたかったのも理由の一つですが、住みながら地域活動をしている中で、住民さんが私たちの名前を憶えて下さったり、差し入れを頂いたり、「最近、元気でやっているか」と声をかけられたりなど、大学で実施されている地域連携型活動とは違う魅力を感じ、入居を決めました。

(田村)私の実家は、大阪府阪南市で和歌山にかなり近いです。実家から片道2時間かけて1年間通いました。5歳上の姉が京都で働くことになり、兄弟で京都に住むことを検討しましたが、どうするか悩んでいました。その際に大学アプリのお知らせで3Lの広報を見て、応募しました。高校の部活で3年間、地域の特産品であるみずなすを通じて、地域との交流を広げる活動と海の清掃活動をしていたこともあり、元々地域活動には興味があったので、形は違いますが、3Lでも地域活動の経験が出来たら良いと思い、入居を決めました。

(細井)田中宮市営住宅に住んでいる学生の中には、1,2回生の時は実家から通っていて、田中宮市営住宅に入って始めて一人暮らしをする場合が多いです。ちなみに、今入居している全ての学生は、そのケースです。

 

Q 3Lで一番学んだことは。

(田村)学びとして一番感じていることは、地域との緩やかなつながりがすごく大事だということです。入居している女性の学生が、「今日は何の日」というのを毎日黒板に書いて花壇に置くのを続けています。些細であまり目立たない取組みですが、私が花壇に水をやった時に住民さんが「毎日面白いね」と言ってくれて、ちょっとした気持ちが地域の人との繋がりを生み出していることに驚きました。これからもこのような取り組みが続けていけたら良いと思いました。

(伊藤)私は、礼儀と挨拶だと思います。地域の人と顔を合わせた時は「こんにちは。おはようございます」と挨拶したり、差し入れをいただいた時は「ありがとうございます」とちゃんとお礼を伝えたり、翌日何か行事がある時は「よろしくお願いします」と挨拶したり、結局、人との良い繋がりを作ろうと思ったら、そういうことをコツコツやっていかないとできないその重要さを改めて感じました。

(細井)私は、継続の力です。団地内で小学校の集団登校が7時45分からありますが、その見送りをまじめに3年間の約9割は参加しました。お見送り隊という感じで毎日「おはよう」「行っていらっしゃい」と挨拶をします。昨年のある日、いつもベビーカーを持って小学校1年生の男の子を連れていたお母さんが、「実はこの子、病気で大人としゃべるのが苦手で。幼稚園の頃も教育実習のお姉さんが来たら泣いて逃げ回るような子でしたが、大学生の皆さんが毎日来てくれて、この子もようやく皆さんの挨拶におはようと返すようになって、その成長をすごく感じています。いつもありがとうございます」と言ってくださいました。継続は力なりという、まさしく毎日行ったから得られた学びと経験が今でも心に残っています。

 

Q この地域の魅力やお気に入りの場所は。

(細井)ここから大学までは自転車で15分弱くらいで、他の下宿生と比べると遠い方です。普通の学生でしたら、大学の近くで遊んだり、飲みに行ったり、ご飯を食べたりすることが多いですが、私たちは、田中宮市営住宅の周辺を拠点に地域の大人の方との関わりで、住民でないと入りにくいちょっとディープな雰囲気のお店など、色んなところに連れて行っていただくことが多く、普通の学生では体験できないもので、社会人になって住むだけでも感じられない大きな魅力だと思います。

お気に入りの場所は「京都市立改進浴場」という銭湯です。京都に来て色んな銭湯を回りましたが、ここは銭湯の受付のおばあちゃんが「ありがとう、おやすみ」と声をかけてくれるのが良いです。また、春の高瀬川沿いが、菜の花が咲いていてとても気持ちが良くおすすめスポットです。

<春の高瀬川沿い>

 

(伊藤)このあたりは、個人経営の個性豊かなお店が多いです。田中宮市営住宅に住む前は、チェーン店など、名前が知られているお店によく行きました。しかし、ここの会長さんにいつも連れて行っていただく定食屋さんも、個人経営で、いろんなお店を回るのは楽しいですし、それが魅力だと思います。

私のお気に入りは、「地球規模で考えろ」という行列ができるラーメン屋さんがあるのですが、そこが癖になって週に一度は食べに行ってしまいます。また、4月に見る伏見のであい橋が、桜が満開でとてもきれいなので、おすすめしたい場所です。

<春のであい橋>

 

(田村)どこに行くにも便利な立地というのが魅力ですね。私は、自転車が好きで、先週はライトアップを見に清水寺に自転車で行きましたが、約30分で行けました。観光で丹波橋とか中書島とか、酒蔵が多い地域にも自転車で約20分で行けます。中学校の頃から一人で京都に来て、自転車を借りてお寺を見に行ったりしましたが、今は、自分の自転車で行けるのでとても楽しいです。

私のお気に入りの場所は、田中宮市営住宅敷地の斜め向かいにある田中宮公園です。秋は紅葉がきれいですが、私が最も気に入ったポイントは、自分が鳥好きだということもあり、最近公園で珍しい鳥が歩いていたのを見て、住宅街なのにこんな珍しい鳥が渡ってくるくらい良い自然環境が残っていることに感動し、お気に入りの場所になりました。

 

<田中宮公園周辺>

 

Q 京都の魅力とは。

(田村)京都は、個人経営の個性豊かなお店が多いです。左京区とか東山区とか、自転車で走るスピードですら、速すぎてもったいないくらいの印象を受けます。ゆっくり回るからこそ楽しめる環境が整っていると思います。

(細井)京都は何でも揃っていますね。実家の奈良ではちょっと都会に出る時は大阪か京都に行きますが、ここに住み始めてからは大阪には行かなくなりました。京都は何でも揃っていて、この地域でいうと南のほうに大手筋商店街が、北には東山三条などがあり、学生のまちならではの大デカ盛りグルメに行けたり、観光も出来たりするなど、色んな遊び方ができるのが良いです。

(伊藤)個人的な好みになりますが、北でいうと、京都の蚤の市によく行きます。フリーマーケットとは少し違うアンティークな、古いものを売っているのが好きです。そして南でいうと美味しいものを売っているお店がたくさんあって、食べ回るのも楽しいです。大阪だと難波とか天王寺とか決まった場所に行って建物の中を回る感じですが、歩いて楽しいのは京都だと思います。

 

Q 京都に来た学生たちが京都に住みやすい環境をつくるためには。

(細井)私たちは、田中宮市営住宅に入って京都市の魅力を知ることができました。3Lのような事例で、学生が住める環境をつくることが大事だと思います。私は、田中宮市営住宅は家賃が安くて京都市との繋がりがあるから入居を考えましたが、例えば、農家さんがやっているお家とか、何かのメリットがあって学生が一人くらいしやすい環境があったら良いと思います。

(伊藤)私も、田中宮市営住宅に住んだことで京都の魅力が分かったと思います。仮に、多少家賃が高くても普通の賃貸住宅にはないプラスアルファがあって、説得できる材料がないと家族に一人暮らしをしたいと言えないところが正直あります。

(細井)私たちは、京都に住んだからこそ京都の魅力をすごく感じていて、住んでいなかったらこの地域の魅力を絶対に知ることができなかったと思います。やはり住むというプロセスは大事です。

(田村)ここに住んでいたら調味料がなくても隣の3Lの学生に借りることが出来ます。大学の友達関係以上のプラスアルファの濃い繋がりがここにはあります。学生はそういう魅力のある要素に、興味が惹かれると思います。

(細井)ただのシェアハウスだと色んな個性のある人が集まってたまに遊ぶくらいだと思いますが、私たちは、自治会という一つの組織に入って、住民として色んなことを一緒にしているので、普通のシェアハウスとは違う濃いつながりがあると思います。人と関わることはめんどくさいかもしれませんが、それが楽しいです。

 

 

3Lアパートメントには、政策学部以外にも文学部、法学部、国際学部など、色んな専攻を持つ学生が7名住んでいます。そして彼らは一人の住民さんとして、自治会に入って役員もやっています。自治会の役員15人のうち7人が学生ですね。少年補導担当、体育振興会担当などをやってもらって、学校の小学校の寄り合いとか、小学校の活動をしながら学区の中の他の保護者や大人たちと一緒に会議や交流をしています。でも学生の本分は、学業ですし、他にもサークルやバイトもあるわけなので、7人全員が地域活動に絶対参加しないといけないことはなく、ローテーションでやるなどして、本業の学業に支障がないようにしています。学生さんと一緒に何かをやる時は、連絡不足とか一般的なことでおばあちゃんに怒られたり、出した意見が現実的な問題で実現できなかったりすることもありますが、学生たちはそれを素直に受けとめてくれます。ここに入ってくれた学生たちが、地域とのつながりや地域活動の実体験を通じて座学では学べないことを学んで京都の良さを知って、卒業後は京都のまちづくりなどのために仕事してもらえたら良いと思います。

 

 

1.第1回 右京区太秦 古き良き『京都の学生文化』にあこがれ京都の大学に進学、そして京都に住み続ける理由

2.第2回 洛西ニュータウン 緑いっぱいでも利便性も譲れない郊外ニュータウンライフ

3.第3回 京都の学生が伝える「住む街」京都の魅力

4.第4回 伏見区竹田田中宮町 地域とつながり学びくらすあったかい下宿 3L APARTMENT

 

 

登録者京安心すまいセンター
最終更新日2023-02-13 15:00:18
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