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賃貸住宅退去時の「原状回復」とは?基礎知識

■□■ 『原状回復』と『善良なる管理者の注意義務』■□■

 「現状回復」とは、賃貸契約終了時において、借りていた人が生活の中で発生させた、傷みや汚れを直すこと。
 簡単に書くと、こうです。
 でも早とちりしてはいけません。その傷みや汚れ、全てが借りていた人の責任とはならない場合が多いのです。
 よく誤解されていますが、『入居した当時の状態にそっくりそのまま戻す』という意味ではありません。
 住宅の賃貸契約書において、建物や設備の損耗は大きく2つにわけられます。違いはいったい、どこでしょうか?

①借りている人が一般的な生活を送ることで生じた損耗
  (…例えば、畳の擦り切れや、日焼けなど)

 一般的な生活を送っていれば、誰が住んでいても起こり得る損耗を『通常損耗』といいます。
 もう一つ、消耗品が、年数を経るごとに価値が下がっていくことを『経年劣化』といいます。
 新品の時に入居して、6年経過すれば、残存価値は1円となり、基本使用による損耗であれば借りている側の負担はなくなります。
 つまり、大家さんには、家賃と引き換えに、住む人にごく普通の生活を送らせる義務があり、それに関わる費用は、大家さんが負担することになります。
 対して、大家さんが自身の財産の価値を守るために行うことは、貸している大家さん側の負担になると言えます。
 次の入居者のために行う鍵の交換やルームクリーニング代は、基本的にはここに含まれると言えるでしょう。

②借りている人の不注意によって生じた損耗
 (…畳についた煙草の焼け焦げ、掃除しなかったことが原因のトイレの詰まりなど)

 他人の財産を借りて住んでいるのだから、部屋を借りて返却するまでの間、それ相応の注意とマナーを以て住まねばなりません。
 これを『善良なる管理者の注意義務』、略して『善管注意義務』といいます。
 通常修繕が大家さん負担にあたる損傷であっても、借りていた人が注意すれば防げたことによる損耗は、借りていた側の負担となる場合があります。
 しかしそのそれも該当箇所とその周辺に適用されるので、計算上は過失を起こした箇所の最小単位、畳1枚分の賠償ですし、経年劣化と通常損耗も差引かれます。
 全て新品にしないとその部屋の美観が損なわれるという理由で全て交換するのであれば、該当最小単位以外の交換代は大家さんの負担になります。

 ②の費用のうち、借りていた側が負担するとなった損傷修繕費は敷金を使います。
 そこでカバーしきれなかった分の費用が、原状回復費として追加請求されるのです。
 ちなみに、契約に『特約』として費用分担の項目が予め記載されており、その内容についてきちんと説明を受けていて、借りていた側も了承していれば、その特約事項が有効となることが多いです。
 有効とされる要件は
 1.特約の必要性があり、かつ、暴利でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
 2.賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
 3.賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること 
 です。
 契約時には特約事項を含めて、その内容を十分に確認しておきましょう。
 ※参考/国土交通省発行『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html



Q1.退去時の立会いが終わりました。
 傷の指摘があり、後日いくらぐらいの請求書が来るのか心配です。


A1.ご心配はよくわかりますが、まずは請求書を待ってください。
 請求書が届いても、内容がよくわからなければ、更に詳しい明細と説明をもらってください。
 納得いく内容であれば支払えばいいのですし、納得がいかなければその点について更に説明を求めましょう。

Q2.ペット不可の物件でペットを飼っていました。
 大家さんにばれたので、退去することに…
 床や壁の傷の補修代、やっぱり全額払わないと駄目ですか?

A2.ペット不可の物件でペットを飼っていたとなると、引っかき傷や臭いなど、物件として想定外のダメージを負うことになります。
 善管注意義務違反ですし、契約違反ともなるので、ペットに関する修繕費用はやはり、違反した方が負担することになると思われます。
 ただ、ペットの傷と経年劣化が認められる部分と、同じ原状回復費用でも判断が分かれるなど、詳細な内容に関しては交渉の余地があるかもしれません。
 認めるべきところは素直に認めて、慎重に話し合いましょう。

Q3.喫煙者です。
 退去時に壁紙の黄ばみが落ちず、全面張替が必要と言われました。
 ルームクリーニング代は負担すると伝えていたのですが、思っていたより高額の請求…
 やっぱり支払わなければならないのでしょうか?

A3.通常の清掃で落ちる汚れであったなら、それは通常損耗という判断になります。
 つまり、この状況でルームクリーニングを行ったとすれば、それは大家さんが財産を守るためにしたことであり、大家さん負担が妥当と言えます。
 しかしルームクリーニングで払拭出来ないほどの汚れは、通常の使用時以上の損耗と判断され、借りていた側の負担となることが多いようです。
 その代金の内訳を念の為確認したうえで、認めるべきところは認めて、支払ってはどうでしょうか。

Q4.契約書をよく見たら『特約』で、退去時に借主の私が全額ルームクリーニング代を支払うという項目がありました。
 サインもしてるし、これって有効?

A4.契約時にきちんと説明を受け、サインをしているなら、「契約内容を了解した」とみなされるのが通常であり、妥当な内容であれば支払わなければならない可能性が高いでしょう。
 しかし、消費者契約の性質そのものに対して全般的に言えることですが、サインしたからといって、あまりにも一方的、どちらかに取って不利過ぎる内容ならば認められません。
 住居の賃貸借契約でも、礼金や保証金、地域の慣習、退去時の原状回復特約を踏まえて通常の賃料はすごく安価であったなど、考慮される事情は様々ありますが、契約をしたからといって必ず全てを担わなければならないということはありません。
 あなたの退去時に必要がなく、次の入居者のためにされたルームクリーニングであれば、大家さん負担が妥当とされるケースもあります。

Q5.退去時の立会いでは問題なく、敷金も全額返金と聞いていたのに、後日高額の追加請求書が送られてきました。
 これ、支払わないといけないの?

A5.使われた敷金の内訳は書いてありますか?
 なければ必ず、まず詳細がわかる文書ももらってください。
 即支払うようなことは避けて、まず内容を検討しましょう。
 退去立会いは基本、大家や管理会社、管理会社が委託した立会専門の業者と、借りていた人で行います。
 入居時にはなかった傷が増えていないか、汚れや設備の不具合など、敷金の使い道や原状回復の費用分担を決める作業なので、その後のトラブルを避けるためにもなるべく当人が立ち会った方がよいでしょう。
 逆に言えば、その時に何も問題なかったのなら、あなたがつけた傷であるという証明はお互いにできません。
 立会い時にお互いに確認し、問題なかったとサインをしていたなら、きちんとそう主張する強さも必要です。
 入居時も気をつけて部屋を見ておき、何か見つければその時点で大家さんや管理会社に伝えてそのやり取りの記録を残しておく、該当箇所の写真を撮っておくのも有効な手段と言えます。
 「知っていたが放置していたから、被害が拡大した」となれば、拡大した分の責任を負わなければならない可能性もあります。

  • 登録者 京安心すまいセンター
    最終更新日 2018-05-27 13:13:17