【連載】中古住宅で快適くらし in 京都

京都の中古住宅で快適に楽しく住まうために必要な実践知識と特徴のある中古住宅での暮らし方を連載します。第2回は,活用事例① 農園付き木造賃貸アパートメント「京都小箱」です。

第2回 活用事例① 農園付き木造賃貸アパートメント「京都小箱」
~ 築50年の文化住宅をリノベーション +α 「畑仕事」で農住一体住宅に ~

 

京都市内では,地価の高騰により子育て世帯が市内に住宅を所有することが難しくなっています。一方で,高度成長期に建てられた住宅の空き家は増え続け社会問題となっています。そんな中,築50年の老朽化した文化住宅をリノベーションし,若い世帯が畑で農作物を作りながら楽しく暮らしている「農園付きの賃貸住宅」が4年前に誕生しました。オーナーの木村さんにお話をうかがいました。

 

 

Q 農園付き賃貸住宅を始められたきっかけは何ですか。

当初は家族で畑をしたいという思いから,土地を探していて,不動産屋さんから紹介してもらった竹林を格安で購入しました。最初は,私が今住んでいる中京区から通って畑をしようと考えていました。竹を伐採している中で隣接している文化住宅付きの土地が気になり,隣地を購入すれば,そこに住む人たちと一緒に畑ができるのではないかと思い始めたのが,この事業をするきっかけです。自分と同じように、畑をしながら暮らしたいという人がいるだろうと考えました。

 

Q 事業化する上で工夫されたことは何ですか。

竹林を畑にするために5か月かかって竹を伐採しました。知り合いに頼んでユンボ(重機)を使って根起こしをしました。塀は伐採した竹を使って自分たちで立てました。建物の改修は,基本は工務店にお願いしましたが,部屋の中の下地処理は知人や家族でやったり,自分たちでできることは自分たちでやり,できるだけコストをかけないように工夫しました。賃貸の需要は低家賃,利便性,間取りにありますが,価格競争をしていては需要が「安くて駅近」に絞られてくるので,そうではないところの付加価値を付けるためにも「畑仕事」がいいのではないかと考えました。

 

 

Q どんな方が入居されていますか。

入居時点で畑をしたい方が7割で動物を飼いたい方が3割でした。もともとペアでの暮らしを想定していて,若い世代が中心に住んでおられます。クリエイティブな仕事をされている方が多く,在宅で仕事されている方もおられます。1世帯あたり10坪の農園を無料で提供していて,現在は半数以上の方が利用されています。運用開始の当初から満室の状況が続いており、現在募集はかけていないのですが,入りたいという問い合わせは多いです。

 

 

Q 住民さん同士のコミュニケーションはどうですか。

新しく入居された方も、畑作りをする中で他の住人の方々と顔見知りになりやすいです。また、農作物を育てるという一筋縄ではいかない目標をもつ者同士なので、お互いに知っていることをシェアしたり、互いの苦労を労い合ったりという、ささやかながらも温かみのあるコミュニケーションが、自然に生まれてきやすいと思います。思った以上に沢山実ってしまうこともあるので、そんな時は作った野菜を分けあったりして、仲良くされていますよ。

 

Q 建物管理はどのようにされていますか。

建物は古いので、不具合は多いです。雨漏りはするし,建付けが悪かったり,湿気が多くカビも生えます。管理会社に一任するよりも、オーナー自身が直接入居者さんと連絡を取り合える環境を整えています。賃貸住宅の管理会社へのクレームの8割は「音」と言われていますが,住民さんには入居時に音の問題や寒いこと等リスクをすべてお話しておき,了解した上で入居して頂くようにしています。不具合があればラインやメール,電話で連絡をもらってできる限り速やかに対応するようにしています。入居時にガイドブックをお渡しして,建物や設備等の使い方,入居時の注意事項等を説明しています。

 

Q 今後この事業をどのように展開される予定ですか。

今までどおり建物の維持は自分でやっていこうと思います。訪れた人が森のようなイメージを抱くぐらいにまで緑を増やしたいです。外壁や格子などに使われている木などの自然素材は、経年に伴い色が抜けていきますが,たとえばそういった時の経過を美しいと感じられるような植物との共存関係が、一つの理想です。また、「畑」というコンセプトも、時間の経過が重要になってくるので,今後の展開はこれをより良く維持することです。若い世帯の方に5~6年は住んでもらいたいと思っていて,退去された後も自然と連絡が取れるような、身近なお付き合いができれば嬉しいなと思っています。

 

取材を終えて

建築設計業務に従事する傍ら,オーナーをされている木村さんはとても人柄がよく,住民さんの快適な暮らしを考えておられる方だと感じました。賃貸住宅にありがちなトラブルがないのは,オーナー兼管理人として住民の立場に立った細やかな対応にあると感じました。何より,建築家ならではの建物へのこだわりはもちろん,敷地全体や事業全体のデザインへのこだわりを感じました。農地は放っておくと雑草が生え,竹林は伸び放題で管理に大変手間がかかるとのことですが,自然豊かな環境が心の癒しとなり,住民さんの新たな活力を見出しているのではないでしょうか。緑豊かな環境や漆喰,木等の自然素材を使ったデザインがモダンでとても印象的な物件でした。古い住宅を所有されている方や土地の活用でお困りの方,京都市内で自然に触れながら暮らしたいと考えておられる方はご参考にされてはいかがでしょうか。

(取材 : 京安心すまいセンター)

 

<前回記事>

1.第1回 実践知識① なぜ中古に注目?

<次回予告>

第3回 中古住宅の活用事例② 農園付き木造賃貸アパートメント「京都小箱」 ~ 入居者インタビュー

登録者京安心すまいセンター
最終更新日2022-06-13 14:39:11
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